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        労働条件に関する不利益変更の高度の合理性


  労働者の労働条件の不利益変更に関する「高度な合理性」には7つの基準がありますが、順次、@〜Fまで、各々サブメニューを設けて、以下のとおり説明させて戴きます。


 
B 就業規則の公平性

 1.注意点
  就業規則による労働条件の不利益変更の遮断措置に関しては、次の2点が
 注意点です。
  ァ) 不公平な適用(狙い撃ち)
   就業規則の運用・適用にあたっては、特定の従業員を意図的に個人
  攻撃しないことです。
   具体的には、例えば賃金カットを55歳以上の従業員に限定し、その
  カット分を中堅層に配分するというような事例。これは一部の従業員
  を狙い撃ちすることに当たります。「相当性」とか「公平性」が認めら
  れないと判断される訳です。
  イ)移行措置を設ける   
   3年程度の期間を設けて、逓減率による賃金カットをする移行期問を
  設けると、裁判官にする「相当性」等の判断にプラスに影響を及ぼす
  ことになります。 

 2.就業規則による労働条件の変更
(1)就業規則の変更によって個別の労働条件を変更する場合
 判例法理を明文化した労働契約法上は、次の3点を要件として、就業規則の変更による労働条件の不利益変更を認めています。
  イ)労使当事者の合意によることを原則とすること
  ロ)就業規則の変更内容等が合理的であること
  ハ)且つ、労働者に周知されていること
(2)就業規則の合理性は、以下の事情等を総合考慮して判断されます。
  イ)労働者の受ける不利益の程度、
  ロ)労働条件の変更の必要性、
  ハ)変更後の就業規則の内容の相当性、
  ニ)労働組合等との交渉の状況、
  ホ)その他の就業規則の変更に係る事情
(3)個別合意の優先
 労使当事者間で労働条件の変更は就業規則によらない個別の合意がある場合は、その合意が優先される。但しこの場合、就業規則で定めた基準を下回ってはならない。

 3.就業規則の労働条件が労働契約となる根拠
(1)秋北バス事件(最高裁昭和43年12月25日判決)
 この事件の判決として、就業規則の法的性質に関して、就業規則が企業に実務上定着し、集団的・画一的に労務管理を行う機能を果たしてきたことなどを踏まえ、就業規則が合理的な労働条件を定めているものであるかぎり、法的規範性を有し、それゆえに個々の労働者の同意にかかわらず就業規則の適用を受けると判示しています。
 また、就業規則が労働者の不利益に変更された場合、労働者の同意もなく、使用者が一方的に、就業規則の変更によって労働条件を労働者の不利益に変更することは許されないことを原則としています。しかしそのうえで、就業規則の変更内容等に「合理性」があることを要件として、就業規則の変更による労働条件の変更を認めています。
(2)就業規則の不利益変更法理の確立
 秋北バス事件の最高大法廷裁判決に掛る就業規則の不利益変更法理は、以降の最高裁判決、下級審で踏襲され、判例法理として定着しています。裁判実務上は、就業規則が労務管理に果たしてきた役割・機能を評価しつつ、その不利益変更については、「合理性」の縛りをかけ、個別事案ごとに裁判所の合理性判断によって労働契約の内容の実質的な公平さを担保してきた訳です。

4.労働契約法
(1)就業規則による労働条件の変更
 労働契約法は平成20年3月に施行されましたが、これにより判例法理の明文化されました。同法第8条は「労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる」と規定しています。労働条件を変更する場合には、労使当事者間の合意によるという大原則を明記している訳です。
 同法第9条本文では「使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない」と規定しています。即ち、秋北バス事件判決の「新たな就業規則の作成又は変更によって、既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは、原則として許されない」に対応しています。

 しかし例外として、第9条ただし書きの「ただし、次条の場合は、この限りでない。」を受けて、同法第10条本文では「使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則変更が合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする」旨を規定しています。これは、秋北バス事件判決が「変更の合理性」を、労働者の不利益に変更された就業規則を個々の労働者に適用されるための要件としています。
 
 そして更に懲戒に関する事案で「就業規則が法的規範としての性質を有するものとして、拘束力を生ずるためには、その内容を適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続が採られていることを要する」としたフジ興産事件判決(最高裁平15年10月10日判決)を踏まえ、2つの要件(@就業規則の変更の「合理性」、及びA変更後の就業規則を「周知」)を前提にして、就業規則の変更による労働条件の不利益変更を認めています。

(2)労働契約法第10条の適用対象
 「不利益」変更の場合が前提となっている労働契約法第10条規定は、就業規則が労働者に「不利益」に変更された場合が、前提になっています(平24年8月10日基発0810第2号、労契法施行通達「労働契約法の施行について」参照)。
 反対に就業規則が従前よりも労働者に有利に変更された場合には、就業規則で定める労働条件によらず、個別の労働契約で決定・変更する際にも、合理性等を要件とするまでもなく、労働契約法第12条により有利に変更された就業規則が個々の労働条件の最低基準となります。従って変更後の就業規則の基準を下回るような労働条件は、変更後の就業規則の基準に引き上げられます。
 
 なお実質的に不利益かどうかの判定において、最高裁は、不利益変更の合理性(相当性)の局面で考慮し、就業規則の不利益変更法理の適用段階では、外形的な不利益を想定していると考えられます。

(3)就業規則の変更の合理性判断
 就業規則変更の合理性については、就業規則変更により、従前の労働条件よりも労働者に不利益な労働条件になるので、その合理性は、新たに労働契約を締結する場合よりも厳格な判断が必要です。即ち、第四銀行事件判決(最高裁平成9年2月28日判決)は、合理性の有無を判断する要素に関して「具体的には、就業規則の変更によって労働者が被る不利益の程度、使用者側の変更の必要性の内容・程度、変更後の就業規則の内容自体の相当性、代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況、労働組合等との交渉の経緯、他の労働組合又は他の従業員の対応、同種事項に関する我が国社会における一般的状況等を総合考慮して判断すべきである」と判示しています。
 労働契約法第10条本文(第四銀行事件判決、みちのく銀行事件判決の7項目を纏めたもの)は、この判決を基に就業規則変更の合理性を判断するのに、次の5つの要素を定めています。これらの要素に照らして合理性が認められれば、変更後の就業規則の労働条件は、労働契約の労働条件となり得ます。
   @労働者の受ける不利益の程度、
   A労働条件の変更の必要性、
   B変更後の就業規則の内容の相当性、
   C労働組合等との交渉の状況、
   Dその他の就業規則の変更に係る事情


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